対角化の恩恵を授かる

モチベーション

  • 行列を用いた座標変換をおさらいしたい
  • 対角化で行列計算を楽にしたい

線形独立と線形従属

線形独立と線形従属 is 何?

列ベクトル を用いて以下のようにおいてみる.つまり,

次に,列ベクトル集合 を用いて,以下のような線形和をつくる.

 

(1)式を0にできるような, が複数あるなら, 線形従属であると言う.ベクトルをうまく組み合わせれば,一つの輪をつくることができるイメージ.

一方,(1)式を0にするには が必要である場合, 線形独立であると言う.つまり,ベクトルを組み合わせても輪がつくれないイメージ.

線形独立と線形独立を判別する方法

(1)式=0とおくと,(1)式から という式がm本できる.つまり,n(=m)次の連立方程式となる.

列ベクトル集合 を合体させてm x nの正方行列とすると,(2)式のように整理できる.

ここで,正方行列の行列式が0以外なら(=正則行列であるなら),逆行列を持てるので, が唯一の解になる.つまり,列ベクトル はそれぞれ線形独立であると判断できる.

一方,正方行列の行列式が0なら,逆行列が存在しないので, 以外にも解があることになる.つまり,列ベクトル はそれぞれ線形従属であると判断できる.

基底と座標変換

を以下のようにおいてみる.

これらが線形独立であることは自明だろう.

この線形独立な 基底という)を組み合わせると,あるベクトル空間をつくることができる.今回は 𝟚 としたので,2次元のベクトル空間ができることになる.

例えば, を用いると,以下のような2次元ベクトルを表現できる.

特に,今回用意した は,それぞれ直交(内積が0)しており,かつ,それぞれの大きさが1なので,正規直交基底と呼ばれる.これは, をx軸の単位ベクトル, をy軸の単位ベクトルとしたデカルト座標系と見立てることができる.

ここで,(3)式のベクトルに,以下の正方行列 を左から掛けてみる.

すると,(3)式は,以下になる.

の各列ベクトルで基底を乗っ取ることができた. 仮に, とすると,

と整理でき, に移り, に移ったことから,行列Aによって(3)式のベクトルが反時計回りに90度回転したと解釈できる.

これは,基底ベクトルを以下の のようにおいたことと同等である.

この基底によりつくられる2次元ベクトルは,(3)式の 方向を 軸とし, 方向を 軸とした座標系上の2次元ベクトルと見立てることができる.

反時計回りに の回転といえば以下の式.基底を三角関数で乗っ取っていることになる.

要素だけ取り出したい場合は,以下の行列を使うと良い. 軸への正射影を実現していることになる.

固有値問題

固有値の求め方

の正方行列 について,固有値問題は i=1,2,…,Mを用いて以下のように定義される.

ここで, は固有ベクトル, は固有値である.上式はM次の単位行列 を用いて,以下のように整理することができる.

固有値問題では,自明解 以外の解を求めたいというモチベーションなので, が逆行列を持たないようにする必要がある.行列式を0にすれば逆行列を持たないので,以下の固有方程式を解くことで,固有値を求めることができる.

固有ベクトルの求め方

以下を解くことで,各固有値ごとの固有ベクトルを求めることができる.

M次の正方行列Aの固有方程式は,複素数の範囲において必ず,M個の固有値・固有ベクトルを持つ.

固有方程式が重解をもつ場合

行列Aの固有方程式により,固有値 (重解)と が得られる.

固有値 の固有ベクトルを とすると,固有ベクトル は以下を満たす必要がある.

ここで, とおくと, なので,固有ベクトル は以下となる.

は自由に選んでも良いので,固有値 (重解)の固有ベクトル は以下の2つとなる.

実対称行列

  • 対称行列;n次正方行列Aについて, を満たすもの
  • 実対称行列;Aのすべての成分が実数である対称行列

行列Aが実対称行列の場合には,その固有値は必ず実数となり,固有ベクトルも実数の範囲で存在する.

実対称行列の固有ベクトル は,以下のような,正規直交(=正規化済みの異なる固有ベクトル同士の内積が0)を満たす.

正規直交基底

正規直交基底とは,以下の3点を満たす列ベクトル集合のことである.

  1. 各ベクトルの長さが1に正規化されている.
  2. 互いに直交する.
  3. ベクトルを並べた行列が正則である.

例えば,以下は正規直交基底である.

グラム・シュミットの直交化により,直交していない複数の線形独立なベクトルから,正規直交基底を求めることができる.これにより,例えば,斜行ベクトルを正規直交基底によって表現することができる.

グラム・シュミットの直交化の手続きは,n個の線形独立なベクトルを用いて,

  1. を正規化したものが1つ目の正規直交基底 になる.
  2. を計算.
  3. を正規化したものが2つ目の正規直交基底 となる.
  4. 次数ぶんだけ繰り返して正規直交基底を求めていく.

直交行列による対角化

正規直交基底を並べた行列を直交行列と呼ぶ.

  • 直交行列の行列式は1か-1である
  • 直交行列の転置行列と逆行列はそれぞれ等しい.

実対称行列Aについて固有ベクトルを求め,各固有ベクトルから正規直交基底を求め,正規直交基底を並べた直交行列をPとすると,以下により,対角成分以外が0な対角行列 を導くことができる.これを対角化という.

結局,対角行列の対角成分は,実対称行列Aの固有値を並べたものである.

正定値と負定値

行列がすべての非零ベクトル に対して, を満たすとき, 正定値行列と呼ばれ, と表す.

がn次の実対称行列であるとすると,直交行列Pが存在するので, と対角化できる.ここで, で変換すると, に注意して,以下のように整理することができる.これは二次形式の標準化(主軸変換)の例であり,対角化による恩恵である.

 

これより,実対称行列Aのすべての固有値が正であれば,対角行列 の対角成分が正になり, が常に正になるので,行列Aは正定値行列である.

また,行列 がすべての非零ベクトル に対して, を満たすとき, 半正定値行列と呼ばれ, と表す.行列 のすべての固有値が0以上であれば,行列 は半正定値である.

更に,負定値・半不定値も定義することができ,固有値が負か0以下であることがそれぞれの条件である.

対角化と座標変換

つづくかも

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